スタッフコラム

東京

不動産とESG・SDGs・サステナビリティとの関係

ESG・SDGs・サステナビリティとは?またそれぞれの関連は?

ESG・SDGs・サステナビリティとは?

ESGとは、2006年に国連が企業や投資家が持続可能な社会の実現に向けて注目すべき要素として提唱した、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字をとったものです。
SDGsとは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称で、2015年に国連が定めた2030年までに達成すべき目標であり、貧困や平等、環境や教育など、さまざまな分野における17の目標と169のターゲットから構成されています。
SDGsイメージ

サステナビリティとは、1987年に「環境と開発に関する世界委員会」で用いられた、現在から将来にわたって地球環境や人間社会の持続可能性を示す概念であり、ESGやSDGsの根底にある考え方です。

上記からESGは、SDGs及びサステナビリティを実現するための具体的な取り組みの一つと言え、SDGsはサステナビリティを可視化するための具体的な指標と言えます。

また、ESG・SDGs・サステナビリティは、それぞれ異なる視点から持続可能な社会を実現するために必要な要素や行動を示しています。ESGは投資家からの視点、SDGsは世界共通の目標、サステナビリティは経済・社会・環境のバランスを重視する視点です。

具体的には、ESGとSDGsは以下のように関連しています。

  • ESGのE(環境)の例:
    CO2排出量の削減、再生可能エネルギーの利用促進、クリーン製品の購入など。SDGsでは目標7(エネルギー)、目標13(気候変動)、目標14(海洋)、目標15(陸域)などが関係します。
  • ESGのS(社会)の例:
    人権問題や格差の解消、多様性や平等の推進、労働環境の改善など。SDGsでは目標1(貧困)、目標3(健康)、目標4(教育)、目標5(ジェンダー平等)、目標10(不平等)などが関係します。
  • ESGのG(企業統治)の例:
    企業倫理やコンプライアンスの徹底、情報開示や透明性の確保、ステークホルダーとの対話など。SDGsでは目標16(平和と公正)、目標17(パートナーシップ)などが関係します。

不動産とESG・SDGs・サステナビリティとの関連?

不動産とESG・SDGs・サステナビリティ

不動産は、これら3つの概念と密接に関係しています。
例えば、不動産は、建物や土地として環境に影響を与えますが、省エネや再生可能エネルギーの利用などで温室効果ガスの排出量を削減することができます(ESGのE)。

また、不動産は、住宅やオフィスや商業施設として社会に影響を与えますが、バリアフリーやコミュニティスペースの設置、防災対策などで人々の生活の質を向上させることができます(ESGのS)。
さらに、不動産は、投資対象や金融商品となり得る資産ですが、情報開示やコンプライアンスなどを通じて、透明性や信頼性を高めることができます(ESGのG)。

不動産は、これらの活動によってESGのみならずSDGsの多くの目標に寄与することができるとともに、現在の人々の快適さや安全性や利便性を向上させるだけではなく将来の世代の生活環境や社会的価値を守ることができます(サステナビリティの実現)。

建物とESG・SDGs・サステナビリティ

不動産のうち特に建物は、ZEH(ゼッチ)・ZEB(ゼッブ)、LCCMといった取組みがすすんでいます。ZEHはゼロ・エネルギー・ハウス(ZEBのBはビルディング)で、建物稼働中において、高断熱・太陽光発電等によりエネルギー収支をゼロ以下にする建物のことです。またLCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)はZEH等の上位概念で建築工事・解体工事期間も含め、ゼロエネルギーを目指します。

また、建物の品質や性能を客観的に評価する認証制度、具体的にはCASBEE(建築環境効率評価システム)やLEED(環境リーダーシップデザイン)などを受ける事務所ビル・物流施設が多くあります。これらの認証制度では、建物のESG要素を総合的に評価することで、ESGやSDGsに対応した建物の建築を推進しています。

不動産業界への影響

ESGやSDGsは不動産業界にとってメリットとリスクがあります。

メリットとしては、環境に配慮した省エネや温暖化対策、社会的に貢献する福祉や災害対策、ガバナンスの向上による信頼性や透明性の確保など、ESGやSDGsに沿った不動産開発や運営は、顧客や投資家からの需要や評価を高めることができます。
また、築古の既存ビルのESG配慮ビルへの改修工事がすすむ可能性があります。
融資金利や税制の優遇・補助金制度の創設が加速されれば、上記の市場がさらに拡大されます。

リスクとしては、ESGやSDGsに適合しない不動産は、将来的に価値が下がる可能性があります。例えば、エネルギー効率が悪い建物や災害に弱い建物は、顧客や投資家から敬遠されるだけでなく、法規制などの変化により維持修繕コストが増加する恐れがあります。また、社会的なニーズや価値観の変化に対応できない不動産は、空室率が上昇する可能性があります。

不動産鑑定評価におけるESG要素の影響

収益価格

収益価格へのESG要素の影響は、主に以下のようなものが考えられます。

  • 収支面ESG要素が高い不動産は入居率や賃料が高くなり、また費用は水道光熱費を中心に低くなる傾向にあります。
  • 市場面ESG要素が高い不動産はリスクが低くなる可能性があるため、利回り(DR・CR・TR)は低下傾向にあります。また、ESG要素が高い建物は、投資家やテナントからの需要も高まることが予想されます。

 

注意点としては、丸の内等の一等地におけるSクラスビルでは、ESGを配慮した建物が標準的となっていることがあるので、収支・利回りの査定においては留意する必要があります。

積算価格

積算価格へのESG要素の影響は、主に以下のようなものが考えられます。

  • 建物再調達原価:ESG要素が高い建物は建築費が高めとなる傾向があります。
  • 建物残存耐用年数ESG要素が高い不動産は残存耐用年数が長くなる可能性があります。

 

以上のように、不動産鑑定評価とESGの関係は密接であり、今後もさらに重要性が高まると予想されます。

 

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