評価手法等

評価手法等

キャップレート(Capitalization Rate・Overall Capitalization Rate)

単年度運営純収益〔NOI(Net Operating Income)〕と不動産価格(V)との関係(Cr=NOI/V)を示す総合還元利回りのことをいうが、アセットマネジメントや投資家サイドでは投資利回り(取引利回り)的な意味合いが強い。

鑑定評価においては直接還元法(Direct Income Method)で採用する還元利回り(Cr)を意味し、運営純収益(NOI)ではなく、純収益(NCF)に対する還元利回り(Cr)を表している(鑑定上のCr=NCF/V)。

原則的時価算定

「原則的時価算定」とは、企業会計基準等において求めることとされている不動産の価格を「財表価格調査の基本的考え方」に定める方法により求める価格調査をいい、原則として不動産鑑定評価基準に則った鑑定評価(フルスペックの鑑定評価)を行う。
例外としては、不動産鑑定評価基準に則ることができない場合や、不動産鑑定評価基準に則らないことに合理的な理由がある場合は、不動産鑑定評価基準に則らない価格調査(一つ以上の評価手法を用いて行う簡便な価格調査で、フルスペックの鑑定評価とは異なる)を行う。
原則的時価算定を行った場合には、成果報告書にその旨を記載しなければならない。

〔不動産鑑定評価基準に則らない価格調査の例示〕

  • 造成工事中又は建築工事中の状態を所与として対象不動産に建物以外の建設仮勘定(未竣工建物及び構築物に係る既施工部分)を含む価格調査を行う場合。
  • 造成工事又は建築工事の完了後の状態を前提として行う価格調査で、不動産鑑定評価基準に定める未竣工建物等鑑定評価を行うための要件を満たさないものを行う場合。
  • 自ら実地調査を行い又は過去に行ったことがあり、直近に行った不動産鑑定評価基準に則った鑑定評価の価格時点又はそれ以外の原則的時価算定を行った価格調査の時点と比較して、当該不動産の個別的要因並びに当該不動産の用途や所在地に鑑みて公示価格その他地価に関する指標や取引価格、賃料、利回り等の一般的要因及び地域要因に重要な変化がないと認められる不動産の再評価※を行う場合。

※グローバル投資パフォーマンス基準(GIPS:Global Investment Performance Standards)に従えば、少なくても3年毎に不動産鑑定評価基準に則った鑑定評価を行う必要があるが、その間の2年間は、不動産鑑定評価基準に則らない価格調査で差し支えないとされる。

公示地と基準地の違いについて

  公示地 基準地
法令 地価公示法 国土利用計画法
管轄 都道府県
評価地点 約3万6千、林地を除く
但し、市街化調整区域内の現況林地含む
約2万、林地を含む
但し、市街化調整区域内の現況林地を除く
価格時点 1月1日 7月1日
公表時期 3月20日頃 9月20日頃
評価人 不動産鑑定士2名 不動産鑑定士1名

資産除去債務

資産除去債務(Asset Retirement Obligation、ARO)とは、有形固定資産の取得、建設、開発または通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令または契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものと定義され、将来その除却費用を負担しなければならないことが明らかな場合において、除却に要する費用は、その資産利用に応じて発生したものと認識するのが合理的であるという考えから、国際会計基準(IFRS)、米国会計基準(US-GAAP)、日本会計基準(J-GAAP)で採用されている概念である。
不動産の鑑定評価では、定期借地権付建物の鑑定評価に際し、定期借地権期間満了後の建物解体撤去費、アスベストやPCB、土壌汚染等の環境汚染物質の除却処分費、建物賃貸借契約における原状回復費等の算定を行うことが多い。

正常価格

不動産鑑定評価基準による価格概念で、「市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格」をいう。

いわゆる「市場価格(マーケットプライス)」に近い概念で、公開市場(オープンマーケット)において、通常の取引能力等を有する市場参加者が、自由意思に基づき特別な動機を持たずに取引を行った場合に成立すると考えられる価格である。

損失補償

損失補償とは、適法な公権力行使により加えられた財産上の特別の犠牲に対して、全体的な公平負担の見地からこれを調整するためにする財産的補償のことである。その根拠は、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる(憲法29条3項)」であるとされる。
不動産の鑑定評価で関連するのは、道路用地としての買収などで運用される「公共用地の取得に伴う損失補償」である。
評価の方法は、土地については、正常な取引価格、建物については、移転させるが原則であるが、移転が困難な場合は、現在の建物の再建築費を算定し、建築年次等に応じたその現在価値及び解体撤去費が金銭で支払われる。(ただし、建物については、建築士が算定を行う。)
損失補償には、多くの分野があるが、主な補償には、移転や再建築に伴う諸雑費及び祭祀料等は、「通常生ずべき損失の補償」として支払われるほか、囲障・外構等は、「工作物補償」、立木竹にあっては、「立木補償」、事業者にあっては、「営業補償」があり、営業補償の算定は、税理士等のほか、不動産鑑定士も行うことができる。

ターミナルレート(Terminal Capitalization Rate)

DCF法の適用に際して、出口(保有期間終了時)の転売価格は通常当該期間終了の翌期の純収益を資本還元して求めるが、この際の適用利率(最終還元利回り、Tr)のことをいう。

保有期間以降の予測純収益は、現時点の予測純収益に比べて精度が劣ること、また、建物等の老朽化に伴う収益獲得能力の低下が予測されることから、鑑定評価上はキャップレート(Cr)より高めに設定するケースが多いが(Cr<Tr)、期間満了時における賃料等の上昇が確実に予想される場合にはキャップレートよりも低く設定する(Cr<Tr)こともある。

ダイナミックDCF法(Dynamic Discounted Cash Flow Method)

ダイナミックDCF法(モンテカルロDCF法ともいう)は、不動産が有する不確実性(賃料変動、テナントの期限前退出、空室期間等)を確率モデルとして設定し、そこからモンテカルロ・シミュレーションにより多数の予測シナリオを生成させ、キャッシュフローの現在価値の確率分布を求める手法である。

将来のキャッシュフローを現在価値に割り引く基本的な考え方はDCF法と共通であるが、DCF法が単一の予測シナリオを前提とし、将来の不確実性を固定的な一種の平均値として扱うのに対し、DDCF法は、将来のキャッシュフローを動的な確率過程として把握することから、多様なリスクを考慮することが可能で、リアル・オプションのプライシング手法としても使われる。

耐用年数

一般的には、減価償却資産が利用に耐える年数をいい、税務上の法定耐用年数がよく知られている。税務上は、恣意性を排除するため「資産の種類」「構造」「用途」別に耐用年数を定め、画一的に運用されるが、不動産の鑑定評価では、建物の耐用年数について、税務や企業会計上の耐用年数と特に区別し、経済的残存耐用年数という概念を用いており、必ずしも法定耐用年数と一致するものではない。
「経済的残存耐用年数」とは、価格時点において、対象不動産の用途や利用状況に即し、物理的要因及び機能的要因に照らした劣化の程度並びに経済的要因に照らした市場競争力の程度に応じてその効用が十分に持続すると考えられる期間」と定義され、具体的には以下のとおりである。
「物理的要因に照らした劣化の程度」というのは、築古であっても、手入れがよく耐震性等に優れた建物は、法定耐用年数を超えていても鑑定評価上は、なおも耐用期間を認めることがあるということで、逆の場合もある。
「機能的要因に照らした劣化の程度」というのは、オフィスビルであれば、設備が古くIT化に対応できない、使い勝手が悪い間取りである、省エネルギー化できていない等、社会的変化に取り残された陳腐化の程度を指す。
「経済的要因に照らした市場競争力の程度」というのは、経済的観点からより高次の利用が望まれる地域にあっても低次の利用に留まることや賃料水準からみた維持管理費とのバランスを欠く場合などは、市場競争力の低下をもたらす。
これらの要因は、それぞれが密接に関連するものであり、不動産鑑定士は、実地調査を踏まえて、最有効使用の観点から総合的に経済的残存耐用年数を判断することとなる。

地価公示(公示地)

地価公示法では「都市及びその周辺の地域等において、標準地を選定し、その正常な価格を公示することにより、一般の土地の取引価格に対して指標を与え、及び公共の利益となる事業の用に供する土地に対する適正な補償金の額の算定等に資し、もつて適正な地価の形成に寄与することを目的とする。」と規定している。
ここでいう「標準地」とは、一般に公示地と呼ばれる地点であり、その地域において土地面積、土地形状、道路の幅員及び接面状況、利用のされ方等が概ね標準的と認められる画地が選定される。
「正常な価格」というのは、売り急ぎや買い進み等、特殊な事情がない場合の更地の価格(公示価格)である。
公示価格は、国土交通省に設置される土地鑑定委員会が、二人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行って、一定の基準日(毎年1月1日時点)における、㎡当たりの価格を判定し、公示するものである。一般的に取引で使われる坪当たりの価格ではないことに注意されたい。
なお、不動産鑑定士は、公示区域内の土地について鑑定評価を行う場合において、当該土地の正常な価格を求めるときは、第六条の規定により公示された標準地の価格を規準としなければならない。

賃貸等不動産に関する注記事項(企業会計基準第20号・平成20年11月28日 企業会計基準委員会)

 一定の不動産については、事実上、事業投資と考えられるものでも、その時価を開示することが投資情報として一定の意義があるという意見があること、さらに、国際財務報告基準が原価評価の場合に時価を注記することとしていることとのコンバージェンスを図る観点から、「賃貸等不動産」に該当する場合には、財務諸表に時価の注記を行うこととされている。
賃貸等不動産とは、棚卸資産に分類されている不動産以外のものであって、賃貸収益又はキャピタル・ゲインの獲得を目的として保有されている不動産(ファイナンス・リース取引の貸手における不動産を除く。)をいう。したがって、物品の製造や販売、サービスの提供、経営管理に使用されている場合は賃貸等不動産には含まれない。

賃貸等不動産に関する注記事項

賃貸等不動産を保有している場合は、次の事項を注記する。ただし、賃貸等不動産の総額に重要性が乏しい場合は注記を省略することができる。
また、管理状況等に応じて、注記事項を用途別、地域別等に区分して開示することができる。

  • 賃貸等不動産の概要
  • 賃貸等不動産の貸借対照表計上額及び期中における主な変動
  • 賃貸等不動産の当期末における時価及びその算定方法
  • 賃貸等不動産に関する損益

賃貸等不動産の時価について

「時価」とは、公正な評価額をいう。通常、それは観察可能な市場価格に基づく価額をいい、市場価格が観察できない場合には合理的に算定された価額をいう。
この場合の公正な評価額は、必ずしも不動産鑑定士の評価である必要は無く、当該企業社内の自己算定でも差し支えない。しかしながら、恣意性を排除し、客観的で公正な評価として、専門家である不動産鑑定士の評価が求められることが多い。
賃貸等不動産の時価は「原則的時価算定」によるものと「みなし時価算定」によるものがある。

賃貸等不動産の範囲

  • 貸借対照表において投資不動産(投資の目的で所有する土地、建物その他の不動産)として区分されている不動産
  • 将来の使用が見込まれていない遊休不動産
  • 上記以外で賃貸されている不動産
  • 賃貸等不動産には、将来において賃貸等不動産として使用される予定で開発中の不動産や継続して賃貸等不動産として使用される予定で再開発中の不動産も含まれる。また、賃貸を目的として保有されているにもかかわらず、一時的に借手が存在していない不動産についても、賃貸等不動産として取り扱う。
  • 不動産の中には、物品の製造や販売、サービスの提供、経営管理に使用されている部分と賃貸等不動産として使用される部分で構成されるものがあるが、賃貸等不動産として使用される部分については、賃貸等不動産に含める。
  • 賃貸等不動産として使用される部分の割合が低いと考えられる場合は、賃貸等不動産に含めないことができる。

ディスカウントレート(Discount Rate)

DCF法の試算に際して、将来発生するキャッシュフロー(NOI、NCF)を発生時期に応じて現在価値に割り戻す際の利率(割引率、Dr)のことをいい、不動産の投資収益率、期待収益率としての性格を有する。

単年度の収益性を示すキャップレート(Cr・還元利回り)に対して、ディスカウントレート(割引率・Dr)は元本の将来変動率(X)を含んだ利回り(総合収益率)であり、Cr=Dr-Xの関係が成り立つ。

鑑定評価においては、キャップレートと同様に、純収益(NCF)に対するディスカウントレートが適用される。

特定価格

不動産鑑定評価基準による価格概念で、「市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とする鑑定評価目的の下で、正常価格の前提となる諸条件を満たさないことにより正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することとなる場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格」をいう。

投資家保護等の社会的要請から、鑑定評価において正常価格を求めることが妥当ではない場合に求められる価格である。

不動産鑑定評価基準では、特定価格を求める場合の一例として、証券化対象不動産に係る鑑定評価において投資家に示すための投資採算価値を求める場合を挙げている。
但し、下記2要件を満たす場合には「正常価格=特定価格」となるため、求める価格は正常価格となる。
(1)証券化スキームによる不動産(特定資産)の運用方法が当該不動産の最有効使用と同じであること。
(2)当該不動産の属する市場において投資採算価値を標準(基準)として価格が形成されていると認められること。

このため、証券化対象不動産に係る鑑定評価実務においては、正常価格を求めることが一般的となっている。

都道府県地価調査(基準地)

地価公示に類似した制度として、都道府県地価調査(以下、地価調査)がある。地価調査は、都道府県から依頼される業務で、国土利用計画法に基づく基準地の鑑定評価を行う。
地価公示から半年後(毎年7月1日時点)の地価を評価するものであるので、地価の変動を速報し、地価公示を補完する役割を担っているとされるが、地価公示の標準地と地価調査の基準地は、必ずしも同じ地点ではない。(地価公示と地価調査で同じ評価地点を代表標準地という。)

みなし時価算定

「みなし時価算定」とは、企業会計基準等において求めることとされている不動産の価格を「財表価格調査の基本的考え方」に定める方法により求める価格調査をいう。
原則的時価算定以外の方法で、鑑定評価の手法を選択的に適用し、又は一定の評価額や適切に市場価格を反映していると考えられる指標等に基づき、企業会計基準等において求めることとされている不動産の価格を求める価格調査である。
みなし時価算定は、賃貸等不動産について、総額の重要性が乏しいか否かの判断材料、重要性が乏しいと判断された賃貸等不動産について適用することができる。 みなし時価算定を行った場合には、成果報告書にその旨を記載しなければならない。

リアル・オプション(Real Options)

金融資産について将来の特定日に前もって決めた価格で売買することのできる権利をオプションといいい、オプション価格は、(1)原資産価格(2)権利行使価格(3)ボラティリティ(原資産の変動性)(4)リスクフリーレート(5)満期の変数を確定し、ブラックル・ショールズ・モデルに代表されるオプション・プライシング・モデルによって決定される。

リアル・オプションは、金融資産以外の実物資産のオプションをいい、事業価値(資産価格)の変動を確率分布の標準偏差を使って評価する。不動産の場合は、開発型で開発後の事業収支の不確実性の高いケースに有効である。ただし、ボラティリティ(原資産の変動性) を的確に示すインデックスが構築されていないため、ダイナミックDCF等によりプライシングする。

路線価 (相続税路線価・固定資産税路線価)

路線価は、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額(千円単位で表示)のことであり、路線価が定められており、一般的に路線価と呼ばれているのは、財産評価基準に基づく、「相続税路線価」で、相続、遺贈又は贈与により取得した財産に係る相続税及び贈与税の財産を評価する場合に用いられる。
このほかに、固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税の算出に用いられる固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税の算出に用いられる「固定資産税路線価」もある。
それぞれの価格水準の関係は、概ね以下のとおりである。

相続税路線価(≒公示価格×0.80)>固定資産税路線価(≒公示価格×0.70)

なお、固定資産税路線価の指定はあるが、相続税路線価の指定が無い地域(路線)があり、倍率地域と呼ばれている。
倍率地域にあっては、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて相続税等を計算する。相続税路線価及び倍率表は、以下の国税庁ホームページで確認することができる。

〔国税庁財産評価基準のページ〕

http://www.rosenka.nta.go.jp/

なお、地価公示・基準地、各路線価は、下記のホームページでも確認可能である。

〔全国地価マップ〕

一般財団法人 資産評価システム研究センター
東京都港区虎ノ門3-4-10 虎ノ門35森ビル8階
http://www.chikamap.jp/chikamap/Portal?btnagree=submit&mid=216

DC法

Direct Capitalization Method(Analysis)の略で、一般的には「直接還元法」と呼ばれており、単年度の純収益〔鑑定評価ではNCF(Net Cash Flow)〕をキャップレート(Cr、還元利回り)で資本還元して収益価格を求める手法である。
DC法における純収益(NCF)は、当該不動産の初年度純収益を採用する場合と将来予測等を加味して標準化(平準化)した純収益を採用する場合があるが、鑑定評価においては後者が一般的である。

将来キャッシュフローの変動を細かく織り込むことはできないが、不動産投資の主要な指標であるキャップレートを用いて比較的容易に収益価格を求めることが可能である。

DCF法

Discounted Cash Flow Method(Analysis)の略で、連続する複数の期間に得られるであろうキャッシュフローを分析して、一定期間の予測純収益〔鑑定評価ではNCF(Net Cash Flow)〕と将来における転売予想価格(復帰価格)をその発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計して収益価格を求める手法である。

各期毎のキャッシュフローの変動を細かく織り込むことが可能であるが、キュッシュフローの変動予測(想定シナリオの設定)や転売予想価格の査定など、精度の高い将来予測が必要となる。

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採算分析 賃貸借・管理 建物・環境

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