資産評価とM&A

PPAとは?M&Aにおける「のれん」の計算と不動産評価の関係を解説

PPAとは?M&Aにおける「のれん」の計算と不動産評価の関係を解説
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会社を買収したとき、支払った金額のすべてが「のれん」になるわけではありません。

まず、取得した土地や建物、設備、識別できる無形資産などを評価し、引き受けた負債とともに会計へ反映します。そのうえで残る差額が、のれんとなります。

この取得原価を資産・負債へ配分する手続きが「PPA」です。

不動産を多く保有する会社の買収では、土地や建物の評価が、のれんの金額や買収後の減価償却費に影響する場合があります。

この記事では、日本基準を中心に、PPAとのれんの関係、無形資産の扱い、不動産評価の役割、実務の進め方を解説します。

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PPAとは?取得原価を資産・負債へ配分する手続き

買収によって何を取得したのかを明らかにする

PPAは「Purchase Price Allocation」の略で、日本語では「取得原価の配分」と呼ばれます。

会計上「取得」に該当する企業結合において、取得原価を、識別可能な資産と引き受けた負債へ、企業結合日時点の時価を基礎として配分する手続きです。個別の項目には、会計基準に従う例外もあります。

例えば、対象会社が長年保有する土地には、帳簿価額と時価に差があるかもしれません。また、決算書には計上されていなかった技術や顧客関連資産を、買収時に識別する場合もあります。

PPAでは、こうした資産・負債を確認し、取得原価の内訳を整理します。

買収価格を決める企業価値評価とは目的が違う

M&A前の企業価値評価は、「いくらで買収するか」を検討するために行います。一方、PPAは、買収に伴う取得原価を会計上どのように配分するかを決める手続きです。

項目 企業価値評価 PPA
主な目的 買収価格の検討・交渉 取得原価の会計上の配分
主な対象 事業や株式の価値 識別可能な資産・負債
結果の使い道 投資判断や取引条件の検討 財務諸表への反映

買収前の評価資料をPPAで活用できる場合はありますが、評価目的や基準日、前提条件を確認する必要があります。

株式取得では、主に連結財務諸表で反映する

株式を取得して会社を子会社化する場合、買い手の個別財務諸表では、通常、取得した株式を子会社株式として計上します。

取得先の資産・負債への配分やのれんの計上は、主に連結財務諸表を作成する段階で行います。PPAによって、対象会社自身の決算書の土地や建物が、そのまま同じ金額に書き換わるわけではありません。

また、共通支配下の取引などは会計処理が異なります。すべてのM&Aに同じ処理を当てはめず、取引の性質や適用基準を確認します。

のれんとは?PPA後に残る差額

資産と負債を評価した後で求める

のれんは、取得原価が、識別した資産の評価額から負債の評価額を差し引いた金額を上回る場合に生じます。

100%取得などの単純なケースでは、次のように表せます。

のれん=取得原価-(識別可能な資産の評価額-負債の評価額)

計算の前に、取得した資産・負債を適切に識別することが必要です。買収価格と帳簿純資産の差額を、そのままのれんとするわけではありません。

ブランドや顧客基盤がすべてのれんになるわけではない

のれんには、買収によるシナジーや、個別の資産として認識できない将来の経済的便益などが含まれます。

ただし、ブランドや顧客基盤に関係する価値でも、識別・認識の要件を満たす場合は、無形資産として別途計上します。

また、のれんは取得原価から計算される残額であり、買収の成功や将来の利益を保証するものではありません。高値づかみの影響が含まれる可能性もあります。

なお、取得原価が識別可能な資産・負債の評価後の差額を下回る場合は、識別や評価を再確認します。日本基準では、それでも残る差額を負ののれん発生益として処理します。

PPAで識別する無形資産とは

決算書に載っていない資産も検討する

PPAでは、買収前の決算書に計上されていなかった無形資産も検討対象になります。

無形資産の候補 確認する内容
商標・ブランド関連資産 名称やブランドが収益へどう貢献しているか
特許・技術関連資産 技術の優位性、利用可能な期間、陳腐化のリスク
顧客関連資産 継続取引の状況、契約内容、顧客の維持率
ソフトウェア 利用目的、機能、更新・再構築に必要な費用

これらは候補であり、名称だけで計上が決まるわけではありません。

日本基準では、法律上の権利など、分離して譲渡可能な無形資産を識別可能なものとして扱います。具体的な認識要件は、適用する会計基準に沿って判断します。

資産の特性に応じて評価方法を選ぶ

無形資産の評価には、主に次の考え方があります。

  • インカム・アプローチ: 将来生み出す収益をもとに評価する
  • マーケット・アプローチ: 類似する資産の取引などを参考に評価する
  • コスト・アプローチ: 再取得・再構築に必要な費用を基礎に評価する

例えば、商標では使用料相当額、顧客関連資産では既存顧客から得られる将来収益に着目する方法があります。

収益予測や利用期間、顧客の離脱率などによって結果が変わるため、評価額だけでなく、前提を裏付ける資料も整理します。

不動産評価でのれんはどう変わる?計算例で解説

土地の含み益と無形資産を反映するケース

ある会社の株式を100%取得し、取得原価が10億円だったケースを考えます。

対象会社の帳簿純資産は6億円ですが、PPAの結果、土地に2億円の含み益があり、別途認識すべき顧客関連資産が1億円あると分かりました。

ここでは、税効果やほかの調整を省略します。

項目 金額
取得原価 10億円
帳簿純資産 6億円
土地の時価評価による増額 +2億円
顧客関連資産の認識 +1億円
資産・負債の評価後の差額 9億円
のれん 1億円

のれんは、次のように求められます。

10億円-(6億円+2億円+1億円)=1億円

買収価格と帳簿純資産の差額は4億円ですが、そのすべてがのれんではありません。この例では、土地へ2億円、顧客関連資産へ1億円を配分し、残る1億円をのれんとしています。

実際には、評価差額に伴う繰延税金負債などを検討する必要があります。したがって、資産の評価額を増やした分だけ、必ず同額ののれんが減るとは限りません。

土地と建物では買収後の費用が異なる

PPAは、のれんの金額だけでなく、買収後の費用にも関係します。

土地は通常、減価償却を行いません。一方、建物や設備へ配分した金額は、残存耐用年数などに応じた減価償却の対象になります。無形資産も、適用基準や耐用年数に応じて償却を検討します。

そのため、同じ取得原価でも、土地・建物・無形資産・のれんへの配分によって、将来の費用の出方が変わる場合があります。

ただし、利益を調整するために配分先を選べるわけではありません。取得した資産の実態と評価根拠に基づいて決めます。

のれんの償却・減損は会計基準によって異なる

のれんの計上後の処理は、日本基準とIFRSで異なります。

項目 日本基準 IFRS
規則的な償却 原則として行う 行わない
償却期間 20年以内の効果が及ぶ期間 該当なし
減損への対応 減損会計に従って判定する 少なくとも毎年、加えて減損の兆候がある場合にテストする

日本基準の償却期間は、一律に20年ではありません。効果が及ぶ期間を合理的に見積もります。IFRSでは、のれんを配分した資金生成単位などを通じて回収可能性を評価します。

償却制度の見直しに関する議論や企業への影響は、「のれん償却廃止とは?M&Aへの影響と不動産鑑定の重要性を解説します」で紹介しています。

PPAの進め方と期限

買収前から準備し、企業結合日時点で評価する

PPAは買い手側が中心となり、取得した会社や外部専門家と連携して進めます。

手順 主な作業
1.会計処理の確認 適用基準、取得への該当性、反映する財務諸表を整理する
2.取得原価と対象の把握 対価の内容、保有資産、未計上の無形資産などを確認する
3.資産・負債の評価 企業結合日時点の状況を基礎に評価し、税効果なども検討する
4.配分とのれんの算定 資産・負債への配分結果から、残る差額を求める
5.財務諸表への反映 評価根拠や耐用年数を整理し、必要な会計処理を行う

監査対象の場合は、評価対象や手法などについて、早い段階から監査人と協議します。

「1年以内」でも、最初の決算での対応は必要

日本基準では、取得原価の配分を企業結合日以後1年以内に行います。

決算までに配分が完了しない場合は、その時点で入手可能な合理的な情報に基づき、暫定的な会計処理を行います。1年の期限があるからといって、最初の決算で処理を省略できるわけではありません。

また、後から得た情報が、企業結合日時点の状況に関するものなのか、買収後に新しく生じた変化なのかを区別する必要があります。

不動産資料は早めに収集する

不動産評価では、登記情報、図面、賃貸借契約、修繕履歴、現地の状況などを確認します。

工場やホテルなど、用途や運営状況が評価に関係する物件では、資料収集や調査に時間がかかることがあります。

買収前から評価目的や基準日、対象範囲を整理しておくと、買収後の決算日程に合わせて作業を進めやすくなります。

PPAで見落としやすい注意点

会計上の評価が税務へそのまま反映されるとは限らない

株式取得によって連結上の土地や無形資産を評価しても、対象会社の税務上の取得価額が同じように増えるとは限りません。

会計上ののれんと、税務上の資産調整勘定なども同じものではありません。取引スキームや税務上の要件によって扱いが異なるため、会計と税務を分けて確認します。

適切なPPAを行っても、減損リスクは残る

識別可能な資産を適切に計上することは、正しい会計処理のために必要です。ただし、それだけで買収後の減損を防げるわけではありません。

事業が計画どおりに進まなければ、のれんだけでなく、識別した無形資産や有形固定資産も減損の検討対象になり得ます。

買収後も、取得時の計画と実績の差を確認し、収益見通しを見直す必要があります。

まとめ

PPAは、M&Aの取得原価を識別可能な資産・負債へ配分する会計手続きです。買収価格と帳簿純資産の差額をすべてのれんとせず、不動産の含み損益や識別可能な無形資産などを確認します。

不動産を保有する会社では、土地・建物の評価が、のれんや買収後の費用に影響する場合があります。決算日程から逆算し、会計・税務・不動産評価の担当者が前提を共有して進めることが大切です。

中央不動産鑑定所では、M&Aに関わる不動産鑑定評価に対応しています。PPAに伴い保有不動産の時価を把握する必要がある場合は、評価目的や会計上の要件を整理したうえで、ご相談ください。

 

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