資産評価とM&A

税務DD(税務デューデリジェンス)とは?目的・調査項目・進め方をわかりやすく解説します

税務DD(税務デューデリジェンス)とは?目的・調査項目・進め方をわかりやすく解説します
士業様からのご相談について

M&Aを進める際には、対象企業の財務状況だけでなく、過去の税務処理に問題がないかを確認することも重要です。

そのために行われる調査の一つが、税務デューデリジェンス(税務DD)です。

税務DDでは、法人税や消費税などの申告状況、過去の税務調査、繰越欠損金、関連当事者との取引などを確認し、買収後に追加の税負担が生じる可能性などを調査します。

税務上の問題を把握しないままM&Aを実行すると、買収後に想定していなかった追徴課税などが発生する可能性があります。

この記事では、税務DDの基本的な意味から、目的、主な調査項目、進め方、M&Aへの影響までわかりやすく解説します。

こちらの記事もご覧ください▶︎M&A(エムアンドエー)のメリットとは?詳しく解説します。

税務DD(税務デューデリジェンス)とは?

税務デューデリジェンス(Tax Due Diligence)とは、M&Aなどの取引に際して、対象企業の過去の税務処理や申告状況を調査し、潜在的な税務リスクを把握するための調査です。

一般的には、税理士や公認会計士などの専門家が、過去の税務申告書や税務調査に関する資料、会計資料などを確認します。

主な確認事項には、次のようなものがあります。

  • 法人税や消費税などが適切に申告されているか
  • 未納税額や将来的な追徴課税リスクがないか
  • 過去の税務調査でどのような指摘を受けているか
  • 繰越欠損金の残高や利用可能性に問題がないか
  • 関連会社や役員との取引が適切に処理されているか

調査結果は、M&Aの実行判断や買収価格、契約条件などの検討に活用されます。

財務DD・法務DDとの違い

M&Aでは、税務DD以外にも財務DDや法務DDなどが行われます。

財務DDでは、対象企業の収益力や資産・負債、キャッシュフローなどを分析し、財務面から企業の実態を確認します。

法務DDでは、契約関係や許認可、訴訟、知的財産などの法的リスクを調査します。

これに対して税務DDでは、過去の税務申告や税務処理を中心に調査し、将来的な追徴課税などにつながる可能性のある問題を確認します。

それぞれ調査する領域が異なるため、案件の規模や内容に応じて各分野の専門家が連携して調査を進めます。

税務DDを行う目的

税務上の問題を事前に把握する

税務DDの主な目的は、対象企業が抱えている税務上の問題をM&A実行前に把握することです。

税務申告書上では問題がないように見えても、過去の取引や会計処理を詳しく確認すると、税務上の問題が存在する場合があります。

例えば、損金として処理していた費用が税務上認められない場合や、消費税・源泉所得税などの処理に誤りがある場合には、後の税務調査によって追加の税負担が生じる可能性があります。

こうした問題を事前に確認することが、税務DDの重要な役割です。

追徴課税などによる想定外の負担を防ぐ

M&A後に過年度の税務処理について問題が判明すると、対象企業に追徴課税などが生じる可能性があります。

特に株式譲渡では、対象会社そのものが存続するため、過去の税務リスクも対象会社に残ります。

そのため、買収前に税務上の問題や金額的重要性を確認し、買収後にどの程度の負担が生じる可能性があるのかを検討することが重要です。

買収価格や契約条件の検討に活用する

税務DDで重大な問題が確認された場合、その内容を買収価格や契約条件に反映することがあります。

例えば、将来的に追加の税負担が発生する可能性が高い場合には、その影響を考慮して買収価格を検討したり、特定の税務リスクについて表明保証や補償条項を設けたりすることがあります。

税務DDは問題を発見するだけではなく、その影響をM&Aの取引条件へどのように反映するかを検討するためにも重要です。

税務DDで確認する主な項目

法人税の申告状況

対象企業の過去の法人税申告書などを確認し、税務処理が適切に行われているかを調査します。

例えば、売上や費用の計上時期、交際費、役員給与、減価償却、引当金などについて、税務上適切な処理が行われているかを確認します。

申告内容に問題がある場合には、修正申告や将来的な追徴課税につながる可能性があります。

消費税・源泉所得税などの申告・納付状況

法人税だけでなく、消費税や源泉所得税などについても確認します。

消費税では課税・非課税・不課税取引などの区分や仕入税額控除の処理、源泉所得税では給与や報酬などに対する源泉徴収が適切に行われているかなどが確認対象となります。

一つひとつの金額が小さくても、長期間にわたって誤った処理が続いている場合には、影響額が大きくなる可能性があります。

過去の税務調査

過去に税務調査を受けている場合には、その時期や調査結果、指摘事項などを確認します。

過去に指摘された問題が適切に是正されているか、同様の処理がその後も続いていないかなどを調査することで、対象企業の税務管理状況を把握できます。

修正申告や更正などがあった場合には、その内容や原因についても確認します。

繰越欠損金

繰越欠損金とは、過去に生じた税務上の欠損金を、一定の要件のもとで将来の所得から控除できる制度です。

対象企業に繰越欠損金がある場合、将来の税負担に影響する可能性があるため、その残高や発生年度などを確認します。

ただし、M&A後も繰越欠損金を必ずそのまま利用できるとは限りません。

支配関係の変動や組織再編などによって利用が制限される場合があるため、単に残高を見るだけでなく、M&A後の利用可能性まで確認することが重要です。

関連会社・役員との取引

対象企業と関連会社、株主、役員などとの取引も重要な調査対象です。

例えば、関連会社に対する貸付金や資産の売買、役員への報酬、会社とオーナー個人との取引などについて、税務上適切に処理されているかを確認します。

通常の第三者間取引とは異なる条件で取引が行われている場合には、税務上の問題につながる可能性があります。

また、海外の関連会社との取引がある場合には、取引内容に応じて移転価格税制などについても確認します。

組織再編・過去のM&Aに関する税務処理

対象企業が過去に合併や会社分割、株式交換、事業譲渡などを行っている場合、その際の税務処理についても確認することがあります。

組織再編税制では、一定の要件を満たすかどうかによって税務上の取扱いが異なるため、過去の取引が適切に処理されているかを確認することが重要です。

税務DDの一般的な進め方

1.調査範囲を決定する

まず、対象企業の規模や業種、M&Aのスキームなどを踏まえて、税務DDの調査範囲を決定します。

すべての税務項目を同じ深さで調査するのではなく、重要性やリスクの高い項目を中心に確認します。

2.必要資料を収集する

対象企業から税務DDに必要となる資料を収集します。

主な資料には、次のようなものがあります。

  • 過去数年分の法人税申告書
  • 消費税申告書
  • 地方税に関する申告資料
  • 決算書・勘定科目内訳明細書
  • 総勘定元帳
  • 税務調査に関する資料
  • 修正申告書や更正通知書
  • 組織再編や関連当事者取引に関する資料

必要となる資料は、対象企業や調査範囲によって異なります。

3.資料分析とヒアリングを行う

収集した資料を分析するとともに、経理・税務担当者や経営者などへのヒアリングを行います。

申告書だけでは分からない取引の背景や特殊な税務処理について確認し、問題がないかを調査します。

4.税務リスクを評価する

確認された問題について、追徴課税が発生する可能性や想定される影響額、M&A取引への影響などを検討します。

すべての問題を同じように扱うのではなく、発生可能性や金額的重要性を踏まえて整理することが重要です。

5.調査結果を報告する

調査結果を報告書などにまとめ、買い手やM&Aアドバイザーなどの関係者へ共有します。

その結果をもとに、M&Aの実行判断や買収価格、契約条件などを検討します。

税務DDの結果はM&Aにどう影響する?

税務DDで問題が見つかったからといって、必ずM&Aを中止するわけではありません。

重要なのは、確認された税務リスクがどの程度の影響を持つのかを評価し、取引条件に適切に反映することです。

例えば、重大な税務リスクが判明した場合には、次のような対応が検討されます。

  • 想定される税負担を踏まえて買収価格を調整する
  • 表明保証や補償条項を設定する
  • クロージング前に売り手側で問題を是正する
  • M&Aのスキームを再検討する
  • リスクが重大な場合には取引自体を見直す

どのような対応が適切かは、税務リスクの内容や金額、M&Aのスキームなどによって異なります。

税務DDを実施する際の注意点

税務DDだけですべてのリスクを把握できるわけではない

税務DDは税務面を中心とした調査です。

財務状況については財務DD、契約や訴訟などについては法務DDなど、必要に応じて他のデューデリジェンスと組み合わせることが重要です。

最新の税制を踏まえて確認する

税制は改正されるため、M&A実行時点の法令や制度を踏まえて判断する必要があります。

特に組織再編や繰越欠損金などは適用要件が複雑なため、個別の取引内容に応じた確認が重要です。

税務の専門家と連携する

税務DDでは、税法やM&A税務に関する専門的な判断が必要になります。

対象企業の規模や取引内容によって確認すべき論点も異なるため、税理士や公認会計士などの専門家と連携して進めることが重要です。

不動産を保有する企業の税務DDで注意したいポイント

対象企業が土地や建物、賃貸不動産などを保有している場合には、不動産に関連する税務処理も重要な確認項目となります。

特にM&Aでは、株式譲渡や事業譲渡など、採用するスキームによって資産の移転方法や税務上の取扱いが異なります。

一方で、税務DDで確認する税務上の簿価と、不動産の市場価値は別のものです。

例えば、対象企業が長期間保有している土地では、取得時から地価が大きく変動している可能性があります。その場合、税務上の処理に問題がなくても、帳簿価額だけでは現在の不動産価値を十分に把握できません。

そのため、不動産が企業価値に大きな影響を与えるM&Aでは、税務DDによる税務リスクの確認と、不動産鑑定評価などによる不動産価値の把握を分けて考えることが重要です。

まとめ

税務DDは、M&Aの対象企業について、法人税や消費税などの申告状況、過去の税務調査、繰越欠損金、関連当事者取引などを調査し、潜在的な税務リスクを把握するためのプロセスです。

税務上の問題を事前に確認することで、想定外の追徴課税などの可能性を把握し、買収価格や表明保証・補償などの契約条件を検討する際の判断材料にできます。

また、不動産を保有する企業では、税務上の簿価と実際の不動産価値を分けて考える必要があります。特に、保有不動産が企業価値に大きな影響を与えるM&Aでは、税務DDだけでなく、不動産そのものの適正な価値を把握することが重要です。

中央不動産鑑定所では、不動産鑑定評価をはじめとする専門的な知見を活用し、M&Aにおける企業価値評価を不動産の側面からサポートしています。

不動産鑑定士による客観的な評価を取り入れることで、帳簿価額だけでは把握しにくい不動産の実態価値を企業価値評価に反映できます。特に、不動産が企業価値に占める割合が大きい場合には、財務・税務など各分野の専門家と連携しながら、不動産の適正な価値を検討することが重要です。

 

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