スタッフコラム

東京

相続税

相続税と最高裁判決及び国税不服審判所の裁決 ~ 最新判例より

相続人の主張

イ.例外規定は、路線価の決定において考慮されていなかった地盤沈下や近隣の廃棄物処理施設等の建設予定等、潜在的な価額低下要因が路線価決定後に明らかにされた場合には、路線価が時価と大きく乖離して過大となることから、想定外の時価下落事情が事後的に生じた場合の救済措置として創設されたものである。

そして、評価通達による評価が「著しく不適当な場合」とは、評価通達に定める評価方法によることが否定されるべき特別の事情がある場合を意味し、この特別の事情は、例外規定の制定趣旨を踏まえて判断されるべきであるから、通達評価額と時価評価額との乖離が著しいというだけでは足りず、客観的な評価減の根拠事実が発生し、時価が激変したことを具体的かつ客観的に立証できる場合を意味する。

ロ.例外規定の要件とされる特別の事情には、節税や租税回避の意図といった主観的要素は該当しない。

ハ.本件被相続人が本件各不動産を取得したのは、所有していた賃貸物件が建物の経年により投資運用効率が悪化したため及び不動産事業の承継予定者が将来在住予定の首都圏に賃貸物件の拠点を移すためであり、取得の経緯には投資の側面と生活設計の側面の双方における合理的な理由がある。

  • 被相続人は北海道に在住しており、取得した甲不動産と乙不動産との地縁は薄いのですが、不動産業なのであり得ないとまではいえません。

ニ.納税者が通達評価額を下回る価額で申告した場合には、評価通達に定める評価方法によらないことを理由に、通達評価額により課税処分を行うが、この点に課税庁による評価通達の使い分けの問題がある。すなわち、本件とは逆のケース(市場価格<通達評価額)では、より高い課税価格(通達評価額)を採用するなど、課税サイドに恣意性がある。

ホ.通達評価額と不動産鑑定士等による評価額との間の乖離が著しいと思われる場合はまれではなく、その場合の全てに例外規定が適用されているものではないこと、さらに、国税当局は、本件各不動産の近隣不動産の評価においても、例外規定が適用された事例を示して、合理性を立証すべきであるが、これについて明らかにしていないことから、租税公平主義に反する。

ヘ.鑑定評価に用いられた最終還元利回りは飽くまで見積もられたものであり、評価主体の恣意により大きく変動するため、収益還元法による時価評価は唯一適正な時価とはいえない。また、相続税法の時価は、相続という、取引によらない偶発的な原因により生じる相続税額算宇のための時価であるから、控えめな評価額とされているのであり、自由な取引が行われるとした場合に通常成立すると認められる価額を前提とする収益還元法に基づく評価によるべきではない。

ト.評価通達とは別の評価方法によって評価して本件各更正処分をしたことは、国税庁長官が発した評価通達に従って財産評価を行い、本件申告をした請求人ら納税者の信頼を裏切るものであり、法の一般原則たる信頼保護法理に違背し、違法である。

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