公営住宅や空港などではコンセッション方式が広まりつつあるが、水道は最も重要な生活インフラであるため、収益性を重視する民間に委ねることは、供給や安全への不安、料金値上げなど、住民の根強い警戒感があり、理解が得られにくいため、上水道の実施事例は少ない。しかし、コンセッション方式は、水道施設の老朽化、少子・高齢化、地方都市の過疎化といった問題に対する有効な解決策と期待されている。 コンセッション方式を導入する住民側のメリットは、運営委託者の幅広い民間ノウハウや創意工夫の発揮が可能になり、サービスの向上、市場の競争原理が働くことで、料金の低廉化が進むことにあるといわれている。 公共側のメリットとしては、組織のスリム化やより需要が高まる分野への職員再配置などが可能となり、施設更新等の財源も確保されることにある。 公共機関は、コンセッション方式に対する住民の理解が得られるように時間をかけて粘り強く周知する必要がある。
【実施事例】
宮城県:上水・工業用水・流域下水道の一体運営(“みやぎ型管理運営方式”)県が資産を保有したまま、
メタウォーター/ヴェオリアなどのコンソーシアムに20年間の運営権を付与。
県議会可決(2021年7月)後、2022年4月に事業開始。
国内で初めて上・工業用水・下水を一体でコンセッション化した事例。
浜松市:下水道(西遠処理区)コンセッション。
西遠浄化センター等(処理場1・ポンプ場2)を対象に2018年(平成30年)4月から20年間の運営委託
(PFI法に基づくコンセッション)を導入。
ヴェオリア等のグループが受託し、長期の効率化・更新を図るスキーム。
熊本県:工業用水道のコンセッション(ウォーターサークルくまもと)
県北の有明工業用水・南の八代工業用水の運営を、国内の工業用水道として初のコンセッション方式で実施。
メタウォーター等5社によるSPCが統括・維持管理・更新を担っている。