評価手法等

正常価格

不動産鑑定評価基準による価格概念で、「市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格」をいう。

いわゆる「市場価格(マーケットプライス)」に近い概念で、公開市場(オープンマーケット)において、通常の取引能力等を有する市場参加者が、自由意思に基づき特別な動機を持たずに取引を行った場合に成立すると考えられる価格である。

特定価格

不動産鑑定評価基準による価格概念で、「市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とする鑑定評価目的の下で、正常価格の前提となる諸条件を満たさないことにより正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することとなる場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格」をいう。

投資家保護等の社会的要請から、鑑定評価において正常価格を求めることが妥当ではない場合に求められる価格である。

不動産鑑定評価基準では、特定価格を求める場合の一例として、証券化対象不動産に係る鑑定評価において投資家に示すための投資採算価値を求める場合を挙げている。
但し、下記2要件を満たす場合には「正常価格=特定価格」となるため、求める価格は正常価格となる。
(1)証券化スキームによる不動産(特定資産)の運用方法が当該不動産の最有効使用と同じであること。
(2)当該不動産の属する市場において投資採算価値を標準(基準)として価格が形成されていると認められること。

このため、証券化対象不動産に係る鑑定評価実務においては、正常価格を求めることが一般的となっている。

DC法

Direct Capitalization Method(Analysis)の略で、一般的には「直接還元法」と呼ばれており、単年度の純収益〔鑑定評価ではNCF(Net Cash Flow)〕をキャップレート(Cr、還元利回り)で資本還元して収益価格を求める手法である。
DC法における純収益(NCF)は、当該不動産の初年度純収益を採用する場合と将来予測等を加味して標準化(平準化)した純収益を採用する場合があるが、鑑定評価においては後者が一般的である。

将来キャッシュフローの変動を細かく織り込むことはできないが、不動産投資の主要な指標であるキャップレートを用いて比較的容易に収益価格を求めることが可能である。

DCF法

Discounted Cash Flow Method(Analysis)の略で、連続する複数の期間に得られるであろうキャッシュフローを分析して、一定期間の予測純収益〔鑑定評価ではNCF(Net Cash Flow)〕と将来における転売予想価格(復帰価格)をその発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計して収益価格を求める手法である。

各期毎のキャッシュフローの変動を細かく織り込むことが可能であるが、キュッシュフローの変動予測(想定シナリオの設定)や転売予想価格の査定など、精度の高い将来予測が必要となる。

キャップレート(Capitalization Rate・Overall Capitalization Rate)

単年度運営純収益〔NOI(Net Operating Income)〕と不動産価格(V)との関係(Cr=NOI/V)を示す総合還元利回りのことをいうが、アセットマネジメントや投資家サイドでは投資利回り(取引利回り)的な意味合いが強い。

鑑定評価においては直接還元法(Direct Income Method)で採用する還元利回り(Cr)を意味し、運営純収益(NOI)ではなく、純収益(NCF)に対する還元利回り(Cr)を表している(鑑定上のCr=NCF/V)。

ディスカウントレート(Discount Rate)

DCF法の試算に際して、将来発生するキャッシュフロー(NOI、NCF)を発生時期に応じて現在価値に割り戻す際の利率(割引率、Dr)のことをいい、不動産の投資収益率、期待収益率としての性格を有する。

単年度の収益性を示すキャップレート(Cr・還元利回り)に対して、ディスカウントレート(割引率・Dr)は元本の将来変動率(X)を含んだ利回り(総合収益率)であり、Cr=Dr-Xの関係が成り立つ。

鑑定評価においては、キャップレートと同様に、純収益(NCF)に対するディスカウントレートが適用される。

ターミナルレート(Terminal Capitalization Rate)

DCF法の適用に際して、出口(保有期間終了時)の転売価格は通常当該期間終了の翌期の純収益を資本還元して求めるが、この際の適用利率(最終還元利回り、Tr)のことをいう。

保有期間以降の予測純収益は、現時点の予測純収益に比べて精度が劣ること、また、建物等の老朽化に伴う収益獲得能力の低下が予測されることから、鑑定評価上はキャップレート(Cr)より高めに設定するケースが多いが(Cr<Tr)、期間満了時における賃料等の上昇が確実に予想される場合にはキャップレートよりも低く設定する(Cr<Tr)こともある。

ダイナミックDCF法(Dynamic Discounted Cash Flow Method)

ダイナミックDCF法(モンテカルロDCF法ともいう)は、不動産が有する不確実性(賃料変動、テナントの期限前退出、空室期間等)を確率モデルとして設定し、そこからモンテカルロ・シミュレーションにより多数の予測シナリオを生成させ、キャッシュフローの現在価値の確率分布を求める手法である。

将来のキャッシュフローを現在価値に割り引く基本的な考え方はDCF法と共通であるが、DCF法が単一の予測シナリオを前提とし、将来の不確実性を固定的な一種の平均値として扱うのに対し、DDCF法は、将来のキャッシュフローを動的な確率過程として把握することから、多様なリスクを考慮することが可能で、リアル・オプションのプライシング手法としても使われる。

リアル・オプション(Real Options)

金融資産について将来の特定日に前もって決めた価格で売買することのできる権利をオプションといいい、オプション価格は、(1)原資産価格(2)権利行使価格(3)ボラティリティ(原資産の変動性)(4)リスクフリーレート(5)満期の変数を確定し、ブラックル・ショールズ・モデルに代表されるオプション・プライシング・モデルによって決定される。

リアル・オプションは、金融資産以外の実物資産のオプションをいい、事業価値(資産価格)の変動を確率分布の標準偏差を使って評価する。不動産の場合は、開発型で開発後の事業収支の不確実性の高いケースに有効である。ただし、ボラティリティ(原資産の変動性) を的確に示すインデックスが構築されていないため、ダイナミックDCF等によりプライシングする。

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