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建物買取代金請求事件(最高裁判決)

建物買取代金請求事件(最高裁判決)
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建物買取代金請求事件

最高裁第二小法廷は、令和8年(2026年)8月28日、借地上の建物の「持分」だけを取得した第三者は、その持分について借地借家法14条の建物買取請求権を行使できないと判断しました。事件番号は令和6年(受)第2169号、事件名は「建物買取代金請求事件」で、最高裁は、東京高裁の原判決を維持し、上告を棄却しました。
重要なのは、最高裁が単に「今回の請求方法が不適切だった」「請求額が高すぎた」と判断したのではなく、建物の持分については、そもそも借地借家法14条の建物買取請求権が成立しないという一般的な法解釈を示した点です。
区分所有建物の専有部分の持分についても同じとされました。 ※ 判決文はこちら

この判決に衝撃を受けた不動産関係者は多いのではないでしょうか?
また、建物所有を目的とする借地権の譲渡は仮に地主が承諾しなくても裁判所が代わりに許可をするという代諾許可制度(借地借家法19条)があるのに、なぜ14条の成立を争うのか?と疑問も生じます。
今回は、14条と19条を整理しながら、本件を少し深掘りして考察してみたいと思います。(なお、本コラムは、コラム担当者個人の見解であり、株式会社中央不動産鑑定所としての公式見解ではありません。)

1 どのような事件だったのか(事件の概要)

事案は次のようなものと報道されています。
地主は、平成2年(1990年)、Aに対し、建物所有目的で土地の一部を賃貸しました。Aはその土地上に区分所有建物を建築し、そのうち一つの専有部分を所有していました。
その後、Aが平成30年(2018年)に死亡し、4人の子が専有部分を各4分の1ずつ相続しました。借地契約は令和元年(2019年)からさらに30年間として更新されています。
そして令和3年(2021年)2月、原告となった第三者が、4人のうち3人から、それぞれの持分を買い取りました。その結果、専有部分の所有関係は次のようになりました。
• 原告となった買主:4分の3
• 残った相続人1人:4分の1
つまり、原告が取得したのは専有部分そのもの全部ではなく、一つの専有部分についての共有持分4分の3でした。
買主は、これに伴う土地賃借権の持分譲渡について地主が承諾しないとして、同年11月、地主に対し「私が取得した4分の3の建物持分を時価で買い取れ」と借地借家法14条の建物買取請求権を行使し、持分の時価相当額と遅延損害金を請求しました。
ここでいう4分の3の持分とは、建物の床面積のうち物理的に4分の3を所有するという意味ではありません。専有部分全体について、原告が抽象的・観念的に4分の3の権利を持ち、残った相続人が4分の1を持つ共有関係です。

権利関係イメージ図

2 下級審における判決の流れ

本件は、一審・二審・最高裁で原告側が一貫して敗訴している(14条の成立を否定)ものの、その理由が途中で大きく変わった事件です。これも本事案の興味深いところで、大まかに整理すると次のとおりです。

訴訟段階  結論  14条の「持分」への適用
東京地裁・2023年12月 原告敗訴 持分でも14条は成立し得るが、本件では信義則違反により成立しない
東京高裁・2024年8月1日 控訴棄却 そもそも持分には14条の権利が成立しない
最高裁・2026年8月28日 上告棄却 高裁を支持し、持分には一律に成立しないと初めて最高裁判例化

東京地裁は共有持分の場合でも14条の成立そのものは認めています。しかし、東京高裁は共有持分の場合は否定し、最高裁もこれを支持しました。

3 借地借家法14条とは何か

土地の借地権が「地上権」ではなく「土地賃借権」である場合、賃借権を第三者に譲渡するには、原則として地主の承諾が必要です。
借地上の建物を第三者に売却すると、通常は建物とともに土地賃借権も第三者へ移転することが予定されます。しかし、地主の承諾や裁判所の代諾許可がなければ、買主はその賃借権の取得を地主に対抗できず、地主から建物収去・土地明渡しを求められる危険があります。
そこで借地借家法14条は、地主が賃借権譲渡を承諾しない場合に、建物を取得した第三者に、「それなら地主が建物を時価で買い取ってください」と請求できる権利を認めています。(裁判所)
この請求は単なる買取り交渉の申入れではありません。適法に行使されれば、地主の意思にかかわらず、建物について時価による売買が成立するという強い「形成権」です。最高裁も、14条の目的を次の二つと説明しています。

1. 建物取得者が建物に投じた資本を回収できるようにすること
2. 社会経済的価値のある建物が無駄に取り壊されるのを防ぐこと

なお、本件は、借地期間満了時に借地人が行使する借地借家法13条の建物買取請求権ではありません。第三者が建物を取得した後、地主が賃借権譲渡を承諾しない場合の14条の問題です。
どちらかといえば、13条を争うケースの方が(鑑定評価的には)一般的な気がしますが、この判決を借地期間満了時の建物買取請求にそのまま当てはめることはできないと思います。

4 借地借家法14条(建物買取請求権)と19条(代諾許可)の違い

ここで、建物買取請求権と代諾許可の違いを整理しておきます。

比較項目 借地借家法19条 借地借家法14条
制度の名称 借地権の譲渡又は転貸の許可(代諾許可) 第三者の建物買取請求権
手続きの主体 元の借地権者(売主 建物を取得した第三者(買主・競落人
権利行使を行うタイミング 建物・借地権の譲渡をする前(事前 建物等を取得した後(事後
請求の対象 裁判所 地主(土地所有者)
権利行使の主な目的 借地権を合法的に第三者へ譲渡・移転させる 地主に建物を買い取らせ、投下資金を回収・精算する
法的な効果 裁判所が地主の承諾に代わる許可を出す(代諾許可 地主に対して建物の時価売買契約を強制的に成立させる(形成権

目的と目指す結果の違い

19条(代諾許可): 「この第三者に借地権を譲渡しても地主に不利益はないはずだ」として、借地関係を第三者に引き継がせて取引を継続・成立させるための制度です。
14条(建物買取請求権): 地主の承諾も19条の代諾許可も得られず、第三者が借地権を引き継げない場合に、地主に建物を時価で買い取らせて撤退・精算するための制度です。

主体とタイミングの違い

19条: 売主(既存の借地権者)が、譲渡契約を完全に履行する前に裁判所へ申し立てます。
14条: 売買や競売などで実際に建物を取得した買主(第三者)が、承諾を得られない後に地主へ請求します。

地主側の対抗手段

19条: 申立てを受けた地主は、「譲渡されると不利益が生じる理由」を主張できるほか、裁判所を通じて「他人に渡すくらいなら自分が自ら買い取る」という介入権(19条4項)を行使できます。
14条: 要件を満たして行使された場合、請求の通知が到達した時点で自動的に売買契約が成立する(形成権)ため、地主は拒否できません。

実務上の関係性

一般的には、まず、建物譲渡前に地主に借地権譲渡の承諾を得ることを目指します。これが大原則であり、実際の取引の多くはこのパターンです。しかし、どうしても地主が応諾しない場合、借地権者の救済措置である19条の手続きによって裁判所の許可を得て、安全に借地権付建物を譲渡することになります。
しかし、事前許可を得ないまま競売等で建物を取得してしまった場合や、地主の承諾が得られず借地権の取得が頓挫した際の下振れリスク回避策(手仕舞い手段)として14条が機能するといわれています。

5 なぜ建物全部なら買い取らせられるのに、持分では駄目なのか

最高裁は、建物全部を取得した場合と、建物の持分だけを取得した場合とでは、地主が負う負担の性質が大きく異なると考えたようです。

建物全部を買い取る場合

第三者が建物全部を取得し、14条の請求を行った場合、地主は時価を支払う代わりに建物全部の所有権を取得します。
地主はその後、

• 建物を第三者に売却して新しい借地権を設定する
• 自ら使用・賃貸する
• 建物を取り壊して土地を別の用途に使う

といった選択ができます。
つまり、地主は代金を負担させられるものの、その代わりに建物の完全な所有権を得るため、土地と建物を一体として自由に処理できます。

建物持分だけを買い取る場合

これに対し、原告の4分の3の持分について買取請求を認めると、地主は次の立場に置かれます。

• 原告に4分の3持分の時価を支払う
• 建物全部ではなく4分の3持分しか取得できない
• 残った相続人が4分の1持分を持ち続ける
• 地主は、その相続人との共有関係に強制的に入れられる

地主は多額の代金を負担しても、建物を単独で売却したり、建物全部を自由に取り壊したりすることができません。他の共有者と協議しながら使用・収益・管理をしなければならず、最終的に共有物分割訴訟まで必要になることもあります。
最高裁は、これを、地主が自ら望んでいない共有関係に巻き込まれる重大な不利益と評価しました。

6 最高裁が重視したもう一つの理由――共有物分割請求

最高裁は、持分取得者には借地借家法14条とは別に、共有物分割請求という資本回収手段があることも重視したと思われます。
共有物分割では、共有者間の協議が成立しなければ、裁判所に分割を求めることができます。現在の民法258条では、例えば次のような分割方法が考えられます。

• 一方の共有者が建物全部を取得し、他方に持分相当額を支払う
• 逆に、残った共有者が持分取得者の持分を取得して代金を支払う
• 建物を競売して、売却代金を持分割合に応じて分ける

最高裁は、持分取得者にはこのような調整方法があるため、建物全部を取得した第三者ほど、地主に強制的に買い取らせる必要性は高くないと判断しました。
もっとも、共有物分割が14条の建物買取請求と経済的に同じというわけではありません。
共有物分割訴訟には時間と費用がかかり、競売になれば市場価格より低く売却される可能性があります。また、持分取得者が全面的価格賠償によって建物全部を取得した場合でも、土地賃借権の譲渡承諾問題が当然に解決するとは限りません。
したがって最高裁は、「共有物分割によって購入代金が完全に回収できる」と保証したのではなく、地主に強制購入させなくても、持分取得者側に法的な調整手段が残されていることを理由にしたと理解すべきではないかと思われます。

7 最高裁の最終的な判断

以上から、最高裁は、賃借権の目的である土地の上にある建物の持分について、建物買取請求権は成立しないと判断しました。
さらに、対象が通常の建物共有持分ではなく、区分所有建物の専有部分の持分であっても結論は変わらないとしました。したがって、原告の4分の3持分について売買は成立せず、地主に時価相当額を支払わせることはできませんでした。
これは、持分価格をいくらと評価するかという問題ではありません。
例えば、

•専有部分全体の時価が4000万円
•4分の3が形式上3000万円
•共有持分減価を考慮すると2000万円

といった価格評価以前の段階で、そもそも14条の強制売買が成立しないとされたものです。

8 裁判官の補足意見にみる借地借家法19条との違い

原告側は、借地借家法19条では「土地の上の建物」という文言に建物持分も含むという実務が定着しているのに、同じ法律の14条だけ建物持分を除外するのは不整合だと主張しました。
これに対し、尾島明裁判官の補足意見は、14条と19条では制度の場面と効果が大きく異なると説明しました(前掲の表を簡潔に再掲します)。

制度 主な場面 効果
借地借家法19条 借地権者がこれから建物を譲渡しようとする場合(事前) 裁判所が事情を審査し、地主の承諾に代わる許可を与える(代諾許可)
借地借家法14条 第三者が既に建物を取得した後、地主が承諾しない場合(事後) 第三者の一方的意思表示で地主との売買を成立させる(形成権)

19条では、裁判所が地主に不利益となるおそれの有無、借地の経緯、残存期間など一切の事情を考慮できます。また、承諾料などの財産上の給付を条件にすることもできます。
一方、14条は第三者の意思表示だけで地主に強制的な売買代金負担を生じさせます。
したがって、同じ「土地の上の建物」という表現であっても、

19条では持分を含める
14条では持分を含めない

という解釈をしても不自然ではない、というのが補足意見の説明です。

9 例外はあるのか

尾島裁判官の補足意見は、この判決をかなり強い一般ルールとして理解しています。
補足意見は、法廷意見について、「一般的に、すなわちどのような場合であっても」建物持分について14条の買取請求権は成立しないという判断を前提にしている、と述べています。
特に興味深いのが、地主が既に残りの持分を持っている場合です。
例えば、

• 地主が建物の4分の1を所有(冒頭、「権利関係イメージ図」のA相続人の持分を地主が取得していた場合)
• 第三者が残り4分の3を取得
• 第三者が地主に4分の3を買い取るよう請求

という場合、地主が4分の3を買えば建物全部の所有者になるため、地主が第三者との共有関係に巻き込まれる問題はありません。
それでも補足意見は、14条の買取請求権を認めないとしています。
理由は、地主に自ら望まない売買代金を負担させる一方、持分取得者と地主との間には共有物分割という柔軟な調整方法が存在するからとしています。
そのため、本判決は、 持分4分の3だから駄目という判断ではありません。
持分割合の大小を問わず、建物全部ではなく「持分であること自体」を理由として14条の適用を否定した判決と理解するのが相当だと思います。

10 この判決が否定していないもの

判決の適用範囲はどうみればよいでしょうか。法律家の議論が待たれますが、以下のように考えても差し支えないと思われます。

建物全部を取得した場合

建物全部を取得した第三者について、14条の建物買取請求権を否定した判決ではありません。要件を満たせば、従来どおり地主への買取請求が問題になります。

借地期間満了時の買取請求

借地借家法13条の建物買取請求権について判断したものではありません。したがって、「共有建物の場合、13条でも持分買取請求が一律に否定される」と直ちに結論づけることはできません。

区分所有建物の専有部分全部

本件で取得されたのは、一つの専有部分の4分の3持分です。一つの専有部分全部を取得した場合まで、直接否定した判決ではないと思います。

持分売買そのものの効力

この判決は、建物持分の売買契約自体を無効にしたものではありません。原告は建物持分を取得しています。ただし、対応する土地賃借権の譲渡を地主に対抗できないため、土地利用関係が不安定になり、その出口としての14条も使えないということです。

直ちに建物収去・退去になるという判断

最高裁が直接判断したのは買取代金請求の可否です。地主が賃貸借を解除できるか、誰に対してどのような建物収去・明渡請求ができるかは、無断譲渡による信頼関係破壊の有無、残った共有者の借地権、建物の使用状況などを別途検討する必要がありそうです。

11 不動産取引実務への影響

この判決により、借地上建物の共有持分を買う場合、「地主が譲渡を承諾しなければ、最後は14条で地主に買い取らせればよい」という出口戦略は使えなくなりました。
持分取得前に処理すべき順序は、実務上、次のようになると考えられます。

地主の承諾を決済条件にする

仲介業者など専門家が介在しない場合は売買契約を先に無条件で完結させるのではなく、

• 地主の書面承諾
• 承諾料の金額
• 新しい借地人の地位
• 地代、更新料、建替え条件等

を確定させ、承諾取得を売買決済の停止条件とすることを確認しておきます。

売主側から19条の代諾許可を申し立てる

地主が合理的理由なく承諾しない場合には、原則として譲渡前に、現在の借地権者である売主から、借地借家法19条の承諾に代わる許可を申し立てる方法があります。
本判決の補足意見も、19条では建物持分を含める実務を前提として議論しています。したがって、持分売買そのものが一律に不可能になったわけではありません。ただし、買ってから14条を使うのではなく、買う前に19条の問題を処理する必要があります。

共有物分割を出口として評価する

承諾が得られないまま持分を取得した場合、残る共有者との共有物分割が中心的な出口になりえると思われます。
しかし、

• 残る共有者に支払能力があるか
• 買主が残り持分を取得できるか
• 競売になる可能性
• 解決までの期間
• 弁護士費用、鑑定費用
• 借地権譲渡問題がさらに生じないか

というリスクを事前に織り込む必要があると考えられます。

12 鑑定評価・投資判断上の意味

鑑定評価や投資判断の観点では、この判決により、借地上の建物持分の価値の一部を潜在的に支えていた可能性のある「地主への強制買取り」という下支えがなくなりました。
したがって、今後の持分評価では、一般の共有持分減価に加えて、

• 地主承諾を取得できる確率
• 承諾料の負担
• 19条代諾許可の見込み
• 残る共有者との関係
• 共有物分割までの期間と費用
• 競売時の減価
• 地代滞納、契約解除等の借地関係リスク

をより深く分析して反映する必要がありそうです。
特に、地主承諾前の持分を専門業者が低価格で取得し、地主への14条請求を出口の一つとして想定する取引モデルには、直接的な影響があります。
少なくとも今後、安易に14条による買取価格を持分価値の最低保証があるという評価はできないと見るべきです。

13 この判決の要点

この最高裁判決を次のようにまとめてみました。
借地上の建物全部を取得した第三者であれば、地主の承諾が得られない場合に14条の買取請求が問題となり得る。しかし、建物の共有持分だけを取得した第三者は、その持分を地主に強制的に買い取らせることはできない。
理由は、持分の買取りを認めると、地主が代金を負担させられたうえ、望まない建物共有関係に巻き込まれる一方、持分取得者には共有物分割という別の調整手段があるからです。
したがって、借地上の建物持分の取引では、売買後の14条ではなく、売買前の地主承諾または19条代諾許可が決定的に重要になった判決と評価できるのではないかと思います。


尾島明裁判官の補足意見は、次のとおりです。

1 所論は、借地借家法19条1項の賃借権の譲渡の承諾に代わる許可については、「土地の上の建物」に建物の持分を含むという解釈が実務で定着しているのに、同法14条で同じ「土地の上の建物」の譲渡が問題になっているにもかかわらずここに建物の持分が含まれないのは解釈としての整合性を欠く旨の主張をする。

しかし、借地権者が建物を第三者に譲渡しようとする場合に裁判所が一切の事情を考慮して(同法19条2項)承諾に代わる許可をするのと、第三者が借地権設定者の承諾を得ないまま建物を取得した場合に借地権設定者の意思にかかわらず形成的に建物の売買契約が成立するのとでは適用の場面も効果も大いに異なるのであるから、それぞれの場合における関係者の利害関係の違いによって、「土地の上の建 物」の解釈を異にすることは特に不自然不合理なことではないというべきである。

2 ところで、法廷意見は、賃借権の目的である土地の上にある建物の持分については、一般的に、すなわちどのような場合であっても、建物買取請求権は成立しないという判断が前提になっているものと解される。

所論中には、本件とは異なる事案であるが、建物が賃借権設定者とそれ以外の者 との共有になっていた場合には、それ以外の者が第三者に持分を譲渡したときに、その持分について建物買取請求権が行使されると賃借権設定者が建物全部の所有権を取得し、他の者との共有関係に巻き込まれることはないことになり、借地権設定者に不利益は生じないのではないかとの疑問を呈するかのように解される箇所もある。

法廷意見は、建物の持分について建物買取請求権が認められるとすると、借地権設定者が当該建物の共有関係に巻き込まれることになり、重大な不利益を被るおそれがあることを本件のような事案において持分を取得した第三者に建物買取請求権を認めない根拠の一つにしているのであるが、そのような不利益がない場合には建物買取請求権の成立が認められるという判断を含むものとは解されない。

持分を取得した第三者からの建物買取請求が認められる結果、借地権設定者が建物全部の所 有権を取得することになると、これによる負担(特に自己の意思に基づかない売買代金の負担)は借地権設定者の側だけに生ずることになるが、一方でこのような場合に建物買取請求権の成立を認めないこととしても、借地権設定者及び第三者双方の側に全面的価格賠償を含む共有物分割による柔軟な利害の調整手段が存在する(第三者が建物全部の所有権を取得した場合にはこの調整手段がない。)。

関係者の利害のバランス等に鑑みると、賃借権の目的である土地の上にある建物の持分に ついては、一般的に、どのような場合であっても、建物買取請求権は成立しないと解することができるものと私は考える。

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