オフィス解約・移転事例分析
東京都心部における最近の主なオフィス解約・移転事例(別表資料)を分析した。
今回の解約・移転事例は123件で、本調査を始めてから最多となった。オフィスの大量供給等により、解約・移転に動く企業が多くみられたものと推測される。
三鬼商事株式会社の公表データによると、東京都心部の空室率はコロナ前に比べ約4.9%の上昇、空室面積は約40万坪の増加となっている。(※)
コロナ前に比べると空室率は上昇しているが、ここ最近では6%台半ばから前半の水準で推移している。(2023年8月時点:6.40%)
業種別では、情報・通信業及びサービス業の解約・移転事例が相対的に多いが、電気機器、小売業、銀行業等、幅広い業種に動きがみられた。あらゆる業種でオフィス再編の動きが進んでいるものと思われる。
解約・移転理由としては、コミュニケーションの活性化、業務効率と生産性の向上、来訪者や従業員の利便性向上、採用面での優位性確保といったものが多い。これらを達成するために、好立地・高グレードのビルに拠点を集約するケースがみられる。
本調査期間のトピックとして、富士通による汐留シティセンターからの転出が挙げられる。9,000~10,000坪程度賃借し、本社を構えるオフィスを全て返却するというもの。移転先は、創業の地であり、現在、本店を構える川崎工場(川崎市中原区上小田中)やJR川崎駅前で賃借しているJR川崎タワー(川崎市幸区大宮町)など。賃料削減などを目的としている。(別表No.118)
このところ、上記のように、企業が本社機能を東京都心部から移す動きが多くみられる。新宿区から群馬県太田市に移転した日本ミシュランタイヤや港区から神奈川県平塚市に移転した横浜ゴム等である。リモートワークの定着により、都心部に大規模なオフィスを構える必要性が薄れているものとみられる。
東京都心部のオフィス空室率は一定の水準で推移しており、需要自体は底堅いが、今年23年と再来年25年は大量のオフィスビルが供給されるため、これに追いつくだけの需要を確保できるか注目である。
(※)新型コロナウイルスの影響が深刻化する前の2020年2月をコロナ前とし、直近の2023年8月と比べた。【中央不動産鑑定所横浜支所 調査による】
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